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「PER」をあなたの担当者がもしパーと言ったら、その方は残念ながらパー

では手始めに簡単なところからいきましょうか。

これはさすがに100%の証券マンが正解すると思いますが、株式の割安割高を測る目安として使う指標に「PER」がありますね。これは何と読むでしょうか?もしあなたの担当証券マンがこれをパーと読んだら担当者を変えてもらうことをお勧めします。

 

もちろん読み方の答えは「ピーイーアール」ですね。株価収益率(Price Earings Ratio )です。おそらく証券マンの方々が、営業する上で一番最初に学ぶ指標。これはほとんどの個人投資家の方もご存知だと思います。

 

では次に担当者の方にPERって「どんな式なの?」と聞いてください。これもさすがに99%の担当者が即答できると思いますが以下の通りですね。

①株価/一株当たり当期純利益(EPS)で、これをいいかえれば、

②時価総額/当期純利益ですね

①から②への移行は大丈夫ですよね?

①の分子分母の両方に発行済株式数をかければ②になりますよね。

この数値は今の株価が1年で稼ぐ1株当たりの純利益の何倍位に評価されているのかを示す指標でだいたい15倍前後が一般的な目安と言われていますね。ですからPERが5倍の企業と50倍の企業を比べたら5倍の企業が割安で50倍の企業の方が割高と考えるのが普通ですね。

また前期の決算よりは今期予想を使うのが一般的です。なぜなら株価は将来を予測して価格に反映することが常だからです。昨年決算が良かった外食産業の会社の昨年のPERを参考にこのコロナ禍で株を買おうとは誰も思いませんよね。常に先、先を読んで形成されるのが株価というものです。

 

ではここからが本題です。

私は個別企業の株価の割安割高を分析する際にはこのPERという指標をほとんど見ませんが、なぜだと思いますか?それはPERには欠点があるからです。

主には、

①段階利益が無視されているのでバランスシートの状況等がわからない。

②PERでは業績トレンドや将来の成長率がわかりにくい。

③あらゆる業種がある中でそもそも比較に向いていない。

の3点位でしょうか。細かく言えばもっとありますけれども。

 

では詳細を解説していきますと、

①段階利益が無視されているのでバランスシートの状況がわからない。

段階利益ってわかりますか?

その企業の本業の利益を示す・・・営業利益

営業利益から企業の財務活動の損益を差し引いた・・・経常利益

経常利益からたまにしかおこらない損益を差し引いた・・・純利益

の3つの利益の項目が段階的にあることをおさえてください。(ややこしくなるので税引前後は無視します。)

営業利益は、企業がもつ本業の強さを示す指標で一番大事な指標。

経常利益は、財務活動、つまり借金をしたり資金運用をしたり本業外でどれ位稼いだかどうかを営業利益に足し引きするもの。一般的なケースとしては借入金があってそれに伴う支払利息があるのでそれを営業利益から差し引くことが多いですね。

PERの式に使われる純利益はそのさらに下に位置していて、毎年あるものではないけれど、その年に特別的に出てしまった本業と関係ない利益や損失を足し引きします。

ですから大げさに言えば同業で売上が同程度で営業利益も同じ10億円での企業でも、

A:無借金で経常利益・純利益も10億円の企業

B:借金が多く返済に5億かかり経常利益・純利益が5億円しか残らなかった企業

の二つの企業を比べたらPERの分母となる純利益が倍になるためPERも倍違ってしまいます。つまりPERのみの尺度で測ると株価は倍違うということです。しかしもしBの企業が借金を完済したとしたら同程度の価値評価をされるべきかもしれませんね。そうなると借金はいつ頃完済するのかバランスシートの状況が気になりますよね。

さらに純利益まで下がるとたまにしか発生しない特別利益や特別損失の類まで考慮しなければならないためPERという指標は本業だけでなく不確定要素を多く織り込んだ指標ということがわかりますね。

特に今年はコロナの春先の自粛要請で一時的な影響を受けた企業でも今年はその特損を出すものの来年からは改善が予想される企業もあれば、社会構造の変化で一時的に留まらず将来的にわたって影響を受ける企業もありますよね。ですから特に今期予想のPERは本当に使いにくい指標とわかるかと思います。

 

続いて、

②PERでは業績トレンドや将来の成長率がわかりにくい。

最近活況なマザーズ市場では異常ともとれるPERの企業って散見されますよね。100倍、200倍は当たり前。コロナの影響でDX関連はこれからの成長が期待されるので、株価はその成長を先に織り込んで動いていく。これは当然の動きです。

ではPERが100倍だから割安で200倍だから割高かというとその域になってしまうと最早相対比較できるものではありません。また業績がこれから伸びていくPER15倍の企業と業績が落ちていくPER15倍の企業なら伸びていく会社を買いますよね。ここでの判断で使用しているのは「成長率」ですよね。

どこかのタイミングで「成長率」も考慮した「四季報だけで出来ちゃう簡単バリュエーション」を紹介したいと思いますが、本当の企業価値や株式価値というのは(この二つの違いもいつかご紹介します。)、企業の業績のトレンドや利益の成長率を織り込まないと把握できないものです。PERという指標は一時点の利益に基づく指標でしか過ぎないため、企業価値に大きな影響を与える業績のトレンドや成長率が計算式に含まれていない指標であるという認識が必要です。

 

最後に、

③あらゆる業種がある中でそもそも比較に向いていない。

こちらは②ともリンクするのでもうおわかりと思いますが、例えば

A:PER15倍のAI事業を行う企業

B:PER15倍の空運業を行う企業

があった場合、どちらを選ぶかを考えたらほとんどの方がAの企業を選びますよね。一般的にPERは15倍前後が目安と言われますが、業種・業態によって成長率も違うため業種間の比較には向いていないのは明白ですね。

少し専門的になるのでまた別の機会に掘り下げたいと思いますが、業種の影響は株価の変動率や株式の出来高(=流動性)にも影響があり、本来は業種や上場している市場等も考慮して株価は判断しなければならず、PERという指標だけであらゆる企業の比較はほぼ機能しないことをご理解いただけますと幸いです。

 

今日はこの辺でおしまいにします。ブログが初めてなのでうまく伝わっているか、わかりませんが、出来るだけ教科書的にならないように気をつけていきますね。

 

では投資は自己責任で!