「過去は過去なのです。未来だけを見ましょう」byネルソン・マンデラ=お金の価値の話です。
過去は過去なのです。未来だけを見ましょう。 ネルソン・マンデラ
この言葉は人種差別と闘い、南アフリカ初の黒人大統領となったネルソン・マンデラ氏を題材とした映画「インビクタス・負けざる者達」の中で出てくるマンデラが発した言葉です。差別を受けて来た黒人に対して、過去受けてきた仕打ちを恨むのではなく、お互いがわかりあって一緒に未来を切り開いていきましょう、という意味の言葉です。
すごくいい映画でお勧めです。アパルトヘイト(白人支配者による黒人に対する人種隔離政策)と戦い、途中27年もの投獄生活を送るという過酷な過去を持ちながらも、対立ではなく融和で問題を解決する。真のリーダーとはあのような優れた人格者なのだと思います。それに比べて今の米大統領選挙と言ったら・・・。
いきなり話がそれましたが、今日はこの「未来を見ましょう」というお話。
ここまで何度も「株価は先々を織込む。個別企業から将来の業績がどうなるかやそのトレンドが大事だよ」という話を何度かしてきました。
それはもちろん大事ですが、今日は少し視点を変えます。
昨日債券について触れました。それはつまり金利の話です。今は低金利なので実感がわかないかもしれませんが、この金利というのは「お金の価値」ひいては「企業価値」に大きな影響を与えるということです。
これは「ファイナンス」の世界の話です。「ファイナンス」と聞くと「借金する」イメージをもたれるかもしれませんが、その意味ではなくここで扱うのは金融工学や数理ファイナンスで意味する「ファイナンス」です。若干数学的になってきますが、今日は算数レベルの話で終わりますので心配無用です。あなたは今証券アナリストの入り口に立っていますからね。
お金の価値には2つ種類があると覚えてください。
それは現在価値(PV:Present Value)と将来価値(FV:Future Value)です。
わかりやすくするために、今、銀行普通預金金利が10%だとしましょう。その上で、大富豪があなたお金をくれると言っていて、次のどちらの受け取り方がよいか選択せよ、と。あなたは資産を銀行預金に預けることしかできず、利息は年1回受取り、税金もかかりません。
A:今すぐに1億円をもらう。
B:1年後に1億円をもらう。
どちらがいいかすぐわかりますよね。答えはA:今すぐに1億円をもらうですね。
なぜなら今すぐに1億円もらい普通預金にあずけたら1年後には1,000万円の利息が受け取れるため1年後には1億1,000円になっていますから。
つまりこの例では、
現在価値(PV:Present Value)1億円と、
将来価値(FV:Future Value)1億1,000万円
のお金の価値が等しいということができます。
では1年後の将来価値が1億円のお金は現在価値になおすといくらですか?
これも大丈夫ですね。
将来価値 1億円/(1+0.1)≒ 現在価値 9,090万円
になります。つまり
現在価値(PV:Present Value)9,090万円と、
将来価値(FV:Future Value)1億円
が等しいということ。
では続いての問題です。次のケースならどちらを選びますか?
C:今すぐに1億円をもらう。
D:3年後に1億3,000万円をもらう。
どうでしょうか。1,000万円の3年分だから3,000万円。これはひっかけでどちらも価値が一緒だなと思った方はいませんか?
答えはC:今すぐに1億円をもらう。です。
この場合の将来価値を計算すると以下のような計算式と答えになりますね。
現在価値1億円×(1+0.1)×(1+0.1)×(1+0.1)=将来価値 1億3,310万円
これが意味することは1年目にもらった利息も2年目以降に利息が発生する原資になるということですね。2年目にもらった利息も同じです。利息も再投資されて利息がつく。これを「複利効果」といいます。
余談ですが、証券マンならわかると思いますが債券を販売する際に、単利表記と複利表記の2種類がありますよね。日本は慣習的に「単利」を使うことも多いですが、グローバルでは「複利」が当たり前です。取り扱っている債券で国内債券と外国債券を見比べて見てください。おそらく国内債券は単利表記で外国債券は複利表記のはずです。
では同じように3年後の将来価値が1億3,000万円のお金は現在価値になおすといくらですか?これはも大丈夫ですね。
将来価値1億3,000万円/(1+0.1)×(1+0.1)×(1+0.1)≒ 現在価値 9,767万円
になります。
では続いて、1年後の将来価値が1億円のお金で、金利が1%だとした場合の現在価値になおすといくらですか?一度やったので簡単ですね。
将来価値 1億円/(1+0.01)≒ 現在価値 9,901万円
になります。
つまり将来価値が同じ1億円であったとしても、
金利が10%の時の現在価値:9,090万円
金利が 1%の時の現在価値:9,901万円
となり金利が高い方が現在価値は低くなるのがわかります。
今計算していただいたように将来価値から現在価値へお金の価値を割り戻す際に使う金利のことを「割引率(DF:ディスカウントファクター)」といいます。
いきなり数式や「r」や「n」を使うと見る気をなくす人もと思うので、今日はこの辺にしておきますね。PV,FV,DFあたりはのワードは覚えておいてください。
大事なことは暗記するということでなくて、ここからいろいろと考えてみることです。
・今は異常な低金利状態が続いているよなあ・・・
・それって割引率が低いことだから将来入ってくるお金の現在価値は・・・
・株というのは毎年株主に対して利益を還元するという有価証券であり・・・
・そうなると企業価値は・・・
みたいな感じにです。
次回に続きます。投資は自己責任で!