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事業価値と企業価値と株主価値の違い

株価が割安か割高かを判断するにはPERPBRを使うやり方はこれまで説明してきました。しかもそれぞれ単体だけで判断するのは難しいということも。

 

ここから多少プロの領域に入っていきますが、その前段階で混同しやすい言葉の定義について今日は触れていきます。

 

以下の昨日の記事内でも将来生み出す利益(お金)の現在価値合計が企業価値であること。」ふれましたが、企業価値とは何ぞや、というお話です。

 

事業価値、企業価値、株主価値について簡単に図示しますとこんな感じになります。(パッと作ったので汚い絵ですみません。)

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・まず会社はお金(フリーキャッシュフロー)を生み出す箱と思ってください。そして上図の①から④について順を追って説明します。

 

①会社が生み出すお金(フリーキャッシュフロー)を計算

会社はお金(フリーキャッシュフロー)を生み出す箱といいました。

いい箱は毎年毎年お金(フリーキャッシュフロー)を生み出してくれますが、悪い箱はお金を生み出してくれなかったり、コロナ禍の影響で大きくお金がマイナスになってしまう年もあったりします。

将来の話なのであくまでも想定するしかありません。例えば会社の中期計画等を見てその通りに信じて計算してもいいですし、信用性がなさそうなら少し控えめに予想します。

1年後、2年後、3年後と見積もっていきますが、5年先、10年先なんて想像できるわけはありませんしその数字の信憑性もどうかと。

したがって読めそうなところまで見積もったら、それ以降は永続価値・ターミナルバリュー(Terminal Value、TV)と言って、それ以降に期待されるキャッシュフローをざっくりとまとめて合計してしまいます。

ここには将来どれくらいの成長率で業績が伸びそうなのかを考慮していきますが、具体的なやり方はまたやりますので今日のところは「そんなイメージか」程度の理解で構いません。

 

ここでフリーキャッシュフローという概念を出してしまいましたが、以下の計算式になります。

フリーキャッシュフロー(FCFと書くのが一般的です。)

=EBIT(概ね営業利益のこと)×(1-法人税率)+減価償却費-設備投資等±運転資本等の増減

こちらも今日は流していいです。今日はあくまでも概念の理解ですので。

 

では次に、

②お金の価値を現在価値になおして合計する

①で計算した各フリーキャッシュフローを現在価値になおしていきます。

各フリーキャッシュフローの価値を現在価値を割戻す時に使用する割引率のことを加重平均資本コスト(WACC)といいます。これも今日の説明に入れるとややこしくなると思うのでまた別途やりますが、簡単に言えば投資家が期待するリターンです。

先日別の記事でお金の将来価値(FV)現在価値(PV)になおすことをやりましたが、あの考えと一緒です。あの時は単純に金利で割戻しましたが、その代わりに加重平均資本コスト(WACC)を使うと思ってください。

そして各年のフリーキャッシュフローの現在価値を計算したらそれらを全て合計します。その合計値が事業価値です。

事業価値とは、その会社のさまざまな事業から生み出される価値のことです。

そしてその価値は、会社がその価値の源であるフリーキャッシュフローを生み出すために使用している資産から発生します。

ここで言いたいことはそのフリーキャッシュフローを生み出すために使っていない資産を会社は持っていることが多いですよ、ということです。

例えば持ち合い株式や、預けっ放しで事業に回していない現金等です。

これらはフリーキャッシュフローを生み出すために使われていないですよね。ですからこれらの事業用に使われていない資産のことを非事業用資産といいます。

 

そして次にやることが

③非事業用資産を足す

②で計算した事業価値に上述の非事業用資産を足します。そしてその合計が企業価値となります。

つまり企業価値=事業価値+非事業用資産という計算になります。

これでようやく企業価値まで辿りつきました。

つまり会社のフリーキャッシュフローは事業用に持っている資産から生み出されますが、それ以外に使われていないものがあれば本来的には株主や債権者に返さなければいけない資産ですよね。ですからそれもきっちり足した合計が本来の企業価値ということになります。

よく物言う株主が現金をたんまり持っている企業に「自社株買いしろ」、「配当しろ」といいますよね。あれは事業用に使っていないなら株主に返せ、ということです。

 

そしてここからいよいよ株主価値を出していきます。

 

④企業価値から債権者価値を引く

図の通りではありますが③で計算した企業価値から債権者価値を引くと最後の株主価値が算出されることになります。

すごく簡単に言えば、会社を清算することを考えたらまず最初に債権者にお金を返済し、残ったものが株主に返ってきますよね。これと一緒の発想です。

ですから返さなければならない債権者価値としては純粋な借金等の有利子負債がまず思いつきますね。これに加えてBS上に載っていない負債なんかもがこれに該当します。例えば退職給付債務やリース債務等です。細かくはやりません。

こうして企業価値から債権者価値を引き、残った価値が株主価値です。この株主価値が現在の時価総額と比べて割安割高かを見ていくことが、一番論理的な方法と言われています。

 

ちなみに上記の計算方法のことをディスカウントキャッシュフロー方式(DCF法)といいます。聞いたことありますかね。

一番論理的でM&Aの世界では当たり前のように使えわれる方法です。この方法もメリット、デメリットがありますので、それはまた追々説明していきます。

 

ちなみに会社を箱といいましたが、この箱が不動産であったりもします。毎年チャリンチャリンと賃料収入(キャッシュ)を落としてくれる箱。箱の中身が会社であれ、不動産であれ、そのお金を落としてくれる箱の価値はこのDCF法で計算することが多いです。

 

ちなみに私はお金を落としてくれない箱(金や原油)にはあまり関心がないです。なぜなら適正な価値を計算できないから。金もリスクヘッジとして使うには以前は効果があったと思うのですが、ETF化が進んでしまい金融商品になってしまったので何か想定外の出来事があったら一緒に下がってしまうようになってしまいましたので。

 

今日ご理解いただきたかったのは、事業価値と企業価値と株主価値の違いでした。

ここを混同されてしまいますと後々理解が進みにくくなるので、ぜひおさえておいてください。

 

では。

投資は自己責任で!

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