数字なき物語も、物語なき数字も意味はない
投資をする際に必ず読み込むのは、企業の決算短信、決算説明資料、有価証券報告の3点セットですね。
有価証券報告書は大変分厚いですが慣れてくるとこの辺読んでおけば、というのがわかるようになってきます。(読み方解説をどこかでやりますね。)
また決算説明会の動画等もしっかり見ます。
どのようなトーンでお話をされているのか、すごく自信がありそうなのか、そうでないのかは結構判断できますね。
インサイダー内容はそういう場面で言うことが出来ないですからね、表情や言葉一言一言に何か裏に隠れていそうなメッセージがないかを読み解くように努めています。
これらの資料やメッセージを読むときは、一期だけではなく過去からのトレンドも重要になります。もっと大事なのは将来どうなるかです。
何度もいいますが、株価は先々を見にいきますので。今期は良くても来期だめなら仕方ありません。反対に今期だめでも来期回復するのであれば買いかもしれません。
そして本当に大事なのはその将来予測=数字にストーリー(物語)があるかどうかです。経営者の発する言葉に成長ストーリーがあるかどうか。
数字なき物語も、物語なき数字も意味はない
タイトルのこの言葉は、御手洗富士夫氏(キャノン社長)の言葉です。
どれだけ物語(ストーリー)が良くても、定量分析が出来ていない戦略はダメ。反対に、いくら定量分析が良くても、物語(ストーリー)の無い戦略はダメというものです。
この言葉はまさに企業のIRに当てはまります。
日本企業のIRはただ数字の羅列だけでメッセージ性が無い企業、つまり物語なき数字だけの企業がまだまだ多いと感じています。
最近の若いマザーズの上場ベンチャー企業は結構出来ているなと感じますが、古くから上場していて大株主が創業一族で大半を占めるような企業は適切なIRが出来ていない会社が多いような印象です。
会社は誰のものかという議論は昔から言われますが、外部の株主からお金を集めて運営している以上、説明責任があります。創業一族で大半を占める企業は会社を自分のものだという感覚なのでしょう。
ソフトバンクの孫さんはどうでしょうか。IRはとてもしっかりされていますよね。出来る経営者はIRの重要性をきちんと認識されています。
私はIRがしっかりしていない企業には投資しようと思いませんし、IRがまだまだな会社は上場していることをもっと意識していただきたいです。
物言う株主は昔は毛嫌いされていましたが、最近は少しずつ認知度が高まっていますよね。本来もっともっと株主は主張していいのです。
私も投資先のIR担当者には連絡を取ることもあります。やみくもに文句を言ったりはしませんが、こういうところをもっと開示してほしい、こういった数字を示してみたらどうでしょうかと投資家として気になることはお伝えするようにしています。
なぜなら株主と経営者は会社の成長へ向けて同じ目線に立っており、経営陣というのは株主から選ばれて任されて経営しているからです。株主として意見を述べることは間違ったことではないのです。
日本にもっともっと「プチ物言う株主」が増えれば、企業のIR活動ももっと活性化しますし、そうすれば海外投資家からの投資も増えるでしょう。すると売買高(流動性)も高まるでしょうし、ひいては株主価値が増えてくると思っています。
また、冒頭の言葉は皆さんのビジネスにも当てはまることです。
何か目的を達成するために提案書を書いたりしますが、その内容が具体的な数字が乏しかったり、数字はきっちり分析されているけれど、メッセージ性が足りなかったりすることはよくあることです。
数字とストーリーの両輪が無いと説得力のある資料になりません。
特にコロナ禍でなかなか直接プレゼン出来ないような環境においてはプレゼン能力でカバーできないことも多いですから、出来るだけストーリー性を意識した資料作成を心がけるようにしています。
証券マンの皆さんもそうですよ。
数字とストーリーの両輪を意識した提案を行えば、お客様の信頼も増すと思います。
では今日はこの辺で。