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かんたん解説『金利が上がるとグロース株が売られるという原理』

今日は『金利が上がるとグロース株が売られるという原理』について簡単に解説することにしました。

わかりやすくするために、出来るだけ専門用語は使わず厳密な説明は省いているので専門家の方はスルーしてください。

 

過去の記事で、「お金の価値」「企業価値」については簡単に触れさせていただきましたが、ファイナンス理論的には、企業が生み出す将来のお金の現在価値の合計企業価値になります。

 

そして、その将来のお金の価値を現在価値に割り戻す時に使う割引率「投資家が期待するリターン」です。

 

図解すると以下のようになります。

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この図を見ればわかりますが、分母が投資家が期待するリターンであり、その期待リターンの式を見ていただくと金利が関連しています

つまり金利が上がると株主の期待リターン(※)債権者の期待リターンも上がるので分母が上がり、事業価値は下がることになります。

※ここだけ少し厳密な補足すると、株主の期待リターンの方は当該銘柄の値動きによっては金利変動の影響を受けないこともあります(ここは別途やりますね)。従って債権者の期待リターン方が金利上昇の影響を大きく受けることを覚えておいてください。

 

一般的に金利が上がると企業価値が下がるという論理はこういうことです。もちろん金利が上がると債券投資の魅力が高まり、株から資金が流れるという投資家行動的な視点もありますけれど、企業価値の増減という点で見ると上記が原理となります。

 

ですが、ここまでは金利が上がると企業価値・株価は下がるという説明にはなりますが、「金利が上がるとグロース株が売られるという原理」とは少し違いますよね。

 

それはグロース株とバリュー株では株価形成に対する見方が異なるということです。

 

グロース株は成長を期待されている若い企業が多いので、会社の資産価値を意識するようなPBRのような指標で測ることが困難です。したがって成長率を織り込んだ式が必要になります。それをさきほどの上の式にあてはめると以下の通りになります。

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つまり投資家の期待リターンから将来の企業の成長率を引いたものを使うので成長率が高ければ高い方が、分母が下がり企業価値が上がるという計算になります。

■グロース株「その企業の永続的な成長率」の部分が国債利回りやGDP成長率を超える成長を期待されていてこの成長率の値がとても大きいのです。

今回のコロナ禍でここの成長率が一気に上がった銘柄が上昇しましたよね。
わかりやすい例でいえばブイキューブでしょうか。オンライン会議は昨年までは成長には時間がかかるかと思われていて「その企業の永続的な成長率」の部分は低い想定で株価がついていましたが、コロナで需要が増えこの成長率が一気に高まると予想され、成長率が上がり分母が下がりました。そして企業価値、株価が大きく上昇するという結果になりましたよね。


一方、
■バリュー株は、成熟産業が多いので元々成長率が低く、上記の「その企業の永続的な成長率」はそもそも低く見積もられていることが多いです。

むしろ成長性を意識した上記の式よりも、純資産価値(PBR)や配当利回りを重視して株価形成がなされることが多く、成長率を使った上の式を使うことが一概に適切とは限りません。

 

まとめますと以下の通りです。

・一般的には金利が上がると企業価値・株価は下がる。これは企業価値を計算するという側面で見ると理論的にはグロース株もバリュー株も変わらないはず。

・しかし実際のマーケットでつけられている株価は将来のキャッシュフローや成長性だけを考慮して形成されているわけではない。

・成長が期待されているグロース株は、資産価値での評価が適切ではなく、「成長率」を意識して株価形成がなされており、それは金利の変動による株価への影響を受けやすいと考えられる。

・一方、成熟産業に多いバリュー株は、そもそも将来のキャッシュフローや成長率よりも資産価値や配当利回り等が着目されて株価が形成されていることが多い。金利が上がったとしても資産価値が目減りすることはあまりないのでその影響を受けにくい。

となります。

 

ただ本来金利が0.1%程度動いただけではそこまで大きく計算上の企業価値は変わりません。金利が上がっていてナスダックやマザーズが下がったりすると、後講釈的にメディアが伝えてしまっているのが要因と感じます。

メディアの伝え方によって『金利が上がるとグロース株が売られるという意識』が浸透し、投資家が敏感になっていることが実際のところだと思います。

 

今日はこの辺で。

投資は自己責任で!