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低PBR銘柄を「ぽっと出のばかチンがレコメンド」してきたら、愛を込めて「このばかチンが♡」と言ってあげて下さい。

今回も投資尺度の基礎中の基礎である「PBR」についてお話します。

単純に「割安だから」という理由だけで、低PBR銘柄を「ぽ(P)っと出のば(B)かチンがレ(R)コメンド」してきたら、ぜひ愛を込めて「このばかチンが♡」と言ってあげて下さい。

 

PBRとはPrice Book-value Ratioの略で、計算式は以下の通りですね。

①株価/一株当たり純資産(BPS)で、これをいいかえれば、

②時価総額/純資産です。さすがに①から②への移行はもう大丈夫でしょう。

これは株価が1株当たり純資産の何倍まで買われているかを示す指標です。昨日の記事でご紹介したPERが利益を尺度とする指標である一方、PBRはバランスシートを尺度として用いる指標です。これも一般的には1倍を下回っているから割安とか言われたりします。

 

では純資産とは何ぞや?こちらもほとんどの人がご理解されていると思いますが、 

純資産=資産-負債。変形すると資産(左側)=負債+純資産(いずれも右側)

資産、負債、純資産はバランスシートの構成要素。バランスシートというワードを簡単に使ってしまいましたが日本語でいう貸借対照表のことです。左側である資産と右側である負債+純資産は常にイコールの関係でこれを「バランスする」とか言ったりします。簿記の試験で貸借対照表を作らせたりしますが左と右の数字が一致しない時に「バランスしないな~」という状況は間違っているということですね。左右は常にバランスします。

 

例えば1,000万円の現金を用意して株式会社を立ち上げたとしましょう。まだ事業ははじめていません。立ち上げた瞬間(A)のバランスシートは、

(A)左側:資産(現金)1,000万円 右側:純資産1,000万円でバランスします。

ここで2,000万円借入して現金が増えた状況(B)のバランスシートは、

(B)左側:資産(現金)3,000万円 右側:負債2,000万円・純資産1,000万円

となりバランスします。

では(A) の状態の会社と(B)の状態の会社がそれぞれあったとして、あなたはどちらの会社の株式をいくらまでなら買いたいですか。

 

だいぶ初歩的過ぎましたかね。答えはどちらも同じ価値1000万円までしか出せませんね。(会社設立のコストや借入ができた優位性とかは無視します。)

 

よく入社後に「PBRが1倍割れだから会社の解散価値をよりも安く買える」と教えられると思いますが、例えば(B)の会社を解散するとしたら、借りた2000万円を保有現金から返済して(A)の状態に戻り、会社には現金=純資産の1000万円が残ります。この残りが解散価値=株主に戻ってくるお金ということです。そんな(B)の株をもし500万円で買えたら500万円得しますね。これがPBR1倍割れ、解散価値よりも安く買えるという状態を指します。

 

だからと言って「よし!PBRが1倍未満の株は買いだな!」とはなってはいけません。

なぜなら実態として会社の資産には土地や建物等すぐに売却できないような固定資産があるので、その資産が帳簿価格よりも下でしか売れなかったり、反対に売却益が出ることもあったりします。また資産売却にはコストがかかります。そして何よりも、昨今はM&Aが一般的になり買収に伴うのれん等の無形資産が資産の中に多く含まれていることが多く、バランスシートを見る際には資産の状況をよくよく見極めないと本質的な純資産価値はわからないのです。(のれん等の無形資産はしっかり理解していただきたいのでまた別途ご説明しますね。)

 

またPBRだけでは一時点のバランスシートを見ているだけなので会社の事業の状況業績トレンドがわからないという大きな欠点もあります。

例えば純資産が100億円の会社がPBRが0.5倍(時価総額50億円)の企業があったとして、その企業が今期50億円の赤字になったとしたら次の決算で純資産は50億に目減りして株価が変わらなければPBRはあっという間に1倍になってしまいますよね。

従ってバランスシートだけ、PBRだけで株式価値の割安割高を判断するのはとても危険な行為なのです。

 

ここまでは初心者向けで、ここからが本質的な話です。

私がPBRだけを重要視しないのは、「バリュートラップ」という罠があるからです。

例えば今の日本の銀行株、特に地方銀行の株式はPBRが1倍割れの会社が無数にありますね。最近は菅首相の地銀再編方針を受けて上昇している銘柄も増えていますけれども。

資産価値に着目した投資はリスクを極力避けたい投資にとって悪いことではありません。「この辺まで下がったらもう下がらないだろう。」と感じて投資する。成長株のように急激に上がる銘柄は上昇の勢いはものすごいものの、ブームが去ると思わぬ急落が待っていることもしばしばです。その点、割安に放置されている銘柄は海外市場の急落を受けても、そもそも人気が無いので同じように急落するリスクは軽減されますよね。

しかし日本株市場が上昇しているのにも関わらず割安に放置され続けて何年も株価は上がらないこと。これがバリュートラップです。

株式投資は誰もがリターンを追求して行うものです。そのリターンの源泉は配当や値上がりによって得られるキャピタルゲインですね。そして値上がりは多くの人が買うことによって発生します。

日本の株式市場には4,000銘柄以上の会社が上場しています。その中からみんなが集まりそうな会社へ投資する。株式市場とは人気投票みたいなもので、もしあなたが四季報や有価証券報告書を読み込んで、割安でみんなが気付いていない掘出し銘柄を見つけたとしても、他のみんなが良いと気付いてくれなければ株価は上がってくれないのです。いつかは気付いてくれるでしょうが、そこに数年かかってしまうこともしばしば。

本来リターンを得るという目的を達成できればどんな銘柄を買ってもいいですよね。相場がいい時、あなたがリターンを出せた時にはあなたが買った銘柄だけでなく他の銘柄の多くも上がっているはずです。

ですからバリュー株投資、PBRに着目した投資を行う際には、このバリュートラップに注意することが重要です。もちろん何年も待てるから値下がりリスクは極力軽減したい、という方もいらっしゃると思いますので、そのスタイルを否定するものではありませんので。

 

さて冒頭のぽっと出のばかチンさん。そんな方がいらしたらきっといい担当者ですね。

証券マンは顧客の資産が出来るだけ動いてくれた方が手数料が入りますよね。ですから本来値動きの大きい株式を買ってもらう方が後々自分のためになりそうなものです。それでも低PBR銘柄を勧めててくるのはお客様の投資スタンスを理解されてのことかと思います。そんな方の推奨する低PBR銘柄へは上記の内容に注意していただければと思います。

 

では投資は自己責任で!